【お金について】

医療費

多発性硬化症の確定診断となった場合、多くの方は再発予防として投薬治療がはじまることになります。しかし、その薬代は高額であり、家計にかなりの負担となります。そのため、いくつかの指定難病患者への助成制度があります。

最初に医療費の仕組みを簡単に説明して、次に、一番初めにやってほしい医療費助成制度の申請について説明します。ほかにも思いつくだけいくつか確認すべき制度がありますので、受けられるサポートは最大限受けられるように確認していただければと思います。

会話形式で書いたものもありますのでそちらもご覧ください。

医療費の自己負担

今まで大きな病気や怪我などしてこなかった人は、病院に行って何気なく医療費を払っていた人もいるかと思います。まずは、ここでいつも窓口で支払っている医療費がどういうものか確認してみましょう。

医療費の自己負担|厚生労働省
医療費の自己負担について紹介しています。

このサイトで示すように多くの方が実際にかかった医療費の自己負担は3割です。すべての医療行為は診療報酬点数が定められていて、1点10円相当になります。10000点の医療行為を受けた場合は医療費総額は100000円になり、自己負担3割の場合実際に払うのは0.3倍の30000円となります。

ちなみに入院の場合は病院によっては、包括医療費支払制度というものがあり、医療行為の積み上げで医療費が決まるのではなく1日いくらで計算される、食べ放題みたいな計算になる場合があります。高い検査・投薬・注射をやるなら外来より入院するほうがお得になるかも(入院時に出る医療保険に加入している場合はなおさら)ですが、入院のところを外来というのはあっても、こういう理由だけで外来で可能なものを入院を希望するのは難しいとは思います。

ちなみにお医者さんが、冗談半分で入院中にたくさん不要不急な検査すると赤字になって怒られるってことを言ってました笑。

指定難病医療費助成制度

投薬治療が決まったら開始前にまずこちらを確認しましょう。これは、指定難病の医療費助成条件を満たすと自分で支払う医療費が軽減される制度です。詳細は以下のページを参照ください。

難病情報センター:指定難病患者への医療費助成制度のご案内https://www.nanbyou.or.jp/entry/5460

いろいろ書いてあって難しいと思うかもしれません。病院からも案内されると思いますが、十分な説明をしてもらえない場合もあります。多発性硬化症の確定診断を受けて、再発抑制治療を開始することが決まったら指定難病医療助成制度を申請したいので臨床個人調査票を作成してほしいと相談しましょう。

臨床個人調査票

臨床個人調査票は、簡単に言うと特定疾患にかかっていることを証明してくれる診断書です。臨床個人調査票を書けるのは認められた難病指定医のみです。主治医が難病指定医でない場合はあると思います。その場合は同じ病院に所属の難病指定医のサインで作成されるでしょう。参考に難病指定医のいる病院、医師の一覧のリンクを貼っておきます。

難病情報センター:都道府県・指定都市別「難病指定医」一覧
都道府県・指定都市別「難病指定医」一覧 – 難病情報センター

この時、気になるのは以下の2つかと思います。

  1. 次に大きな費用が発生する時(入院、薬)までに申請が間に合うか
  2. 書いてもらって医療費助成の認定が通るのか

1つ目ですが、多発性硬化症の診断が確定したとなると、近いうちに再発抑制のための治療導入が始まると思います。この臨床個人調査票が完成したうえで、医療費助成の申請を行うので、入院日程を調整できるようであれば、臨床個人調査票完成→医療費助成申請受理→入院の流れをとれるかをお医者さんに相談してみましょう。申請受理日より前にかかった費用は助成の対象になりません。

2つ目ですが、多発性硬化症の確定診断が出たからと言って助成が認定されるわけではありません。お医者さんに多分認定されると思うから治療を始めようといわれたとしても、お医者さんは認定されなかった場合のことは保証してくれないので、最終的には自分で決めることになります。

治療費助成の認定要件は、多発性硬化症の診断条件がそろっていることだけでなく、重症度も基準に入っています。そのため多発性硬化症なんだけど体は何不自由ない人は不認定になる場合があります。この重症度基準は平成27年から追加されたものなので、もしかしたら知らない人もいるかもしれません。

<参考>多発性硬化症サポートナビ:多発性硬化症の患者さんが受けることができる難病医療費助成制度について
難病医療費助成制度|助成制度などの社会的支援|多発性硬化症サポートナビ
多発性硬化症(MS)の患者さんが受けることができる難病医療費助成制度についてご説明しています。病気の重症度や毎月の治療費に応じて、「一般」「軽症高額」「高額かつ長期」の3種類があります。本サイトは、バイオジェン・ジャパン株式会社が運営しています。

「症状が重症」とは、下記1、2のいずれかもしくは両方に該当する状態です。

1. EDSS 4.5以上

「自力で歩ける距離が300m程度」の身体障害がある状態、あるいは片方の目に高度の視力障害(0.2以下)があり、日常生活に最小限の補助が必要な状態

2. 視覚 良いほうの目が下記の状態

Ⅱ度:矯正視力 0.7以上、視野狭窄あり※

Ⅲ度:矯正視力 0.2以上 0.7未満

Ⅳ度:矯正視力 0.2未満

※中心の残存視野がゴールドマンⅠ/4視標で20度以内

https://www.ms-supportnavi.com/ja-jp/home/subsidy/subsidy01.html
<参考>指定難病患者への医療費助成の概要 - 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000523494.pdf

重症度が認定基準を満たしていない場合

臨床個人調査票にEDSS4.5以上の記載がされない場合でも臨床個人調査票を手に入れて申請する必要があるでしょうか。認定が下りないのに3000円ほど支払って臨床個人調査票を手に入れるのもなんだか意味がないような気がしてしまいます。

私の場合、EDSS2.0でしたが、主治医に聞くと、明らかに多発性硬化症の要件を満たしていれば重症度が基準を満たしていなくても認定が通る場合が多いので出すとのことでした。

とはいえ、以下に説明する「軽症高額特例」に当てはまっていれば重症度の基準がなくなりますので申請時にチェックしてください。

軽症高額特例

診断の要件は満たしていて重症度は満たしていない場合でも、申請月を含む直近12か月に3か月以上医療費総額が33330円(診療報酬点数3333点、3割負担の場合自己負担額10000円)以上かかった場合は、医療費助成の対象となります。確定診断までにMRIや血液検査、腰椎穿刺の検査代であったり、急性期のステロイドパルス療法であったりなどでこの条件を満たしている場合は、新規申請の時点から軽症高額特例で申請が可能です。

これは申請対象の難病に関係している医療費が原則なので、歯医者だったり難病指定医療機関でない医療機関のものは含めることができません。

【参考】難病情報センター:都道府県・指定都市別「難病指定医療機関」一覧
都道府県・指定都市別「難病指定医療機関」一覧 – 難病情報センター

逆に指定医療機関であれば、診療明細書の添付義務はないので、申請対象の病気に直結しているかどうかは見られません。ヘルニアだったり脳梗塞だったり紆余曲折して確定診断にたどり着く方も少なくないと思いますが、その時にかかった医療費は含めることができます。

ただし、臨床個人調査票の発症年月の記載以降の医療費に限ります。そのため、過去にも何回か怪しい症状があったのであれば、特に病院を変えたりしている場合はきちんと主治医に経過を説明をして発症年月を適切に記載してもらうようにしましょう。

高額かつ長期

新規申請時は関係はないですが、軽症高額特例と別に、さらなる助成として「高額かつ長期」の制度があります。

「高額かつ長期」の認定申請を行った日の属する月以前の12か月の間において、
支給認定を受けた指定難病の1か月当たりの医療費総額が50,000円(診療報酬点数5000点、2割負担の場合自己負担額10000円)を超えた月が6か月以上あるときに適用されます。

この制度は軽症高額特例と異なり、6か月のカウントは難病医療費助成の支給認定を受けた日以後からのカウントになります。

難病情報センター:「軽症高額」と「高額かつ長期」の詳細
https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/keikasoti180117.pdf

都道府県単位で実施・申請先は管轄の保健所

指定難病医療助成制度は各都道府県で案内されており、申請先、問い合わせ先は住んでいる地域の管轄の保健所になります。以下に都道府県別の案内の記載ページと管轄保健所一覧をまとめました。ある程度自分で確認したら、あとは納得いくまで保健所に相談してしまいましょう。

付加給付制度(健康保険組合独自の制度)

指定難病医療費助成の認定を受けられない場合はどうすればいいでしょう。

説明をとばしてしまいましたが、まずは高額療養費制度によって医療費は単純に3割負担ではなくさらに軽減されます。

高額療養費制度 - 厚生労働省
高額療養費制度を利用される皆さまへ
高額療養費制度を利用される皆さまへについて紹介しています。

それでもこの制度だけでは収入によっては月10万弱の医療費になる場合もあります。しかしながら、いくつかの健康保険では付加給付制度という制度があるため、自分の入っている健康保険組合に問い合わせをしてみましょう。一例では、月額25000円以上の自己負担をした場合は差額が返ってくる制度になっているところもあります。この場合なら、指定難病医療費助成のことをまずは気にせず治療を開始してもよいかもしれません。

この、高額療養費制度及び付加給付制度は指定難病に関係のない仕組みですので指定難病に関係のない医療費も合算して処理されるので、収入によっては指定難病医療費助成してもしなくてもあまり変わらない感じになります。

特定疾病療養者見舞金制度

こちらは市町村で行っている制度です。お住まいの市町村でこの制度について確認をしてみましょう。こちらは市町村ごとに支給金額にかなり差があります。例えば茨城県の令和元年度難病患者福祉手当一覧を見ると年額10,000円~48,000円といった幅があります。申請は、多くの場合指定難病医療費助成の認定が通り、特定医療費指定難病受給者証を受け取ってからになります(詳細は問い合わせください)。

労働組合の私傷病見舞金・入院見舞金

所属している労働組合によっては、労働組合がやっている任意保険ではなく、労働組合自体に加入しているともらえる見舞金というものがある場合があります。知らないと申請せずに期限切れになったりするので、もらえる見舞金があるかどうかを組合に聞いてみましょう。入院1日2000円もらえるとすると、30日で60000円もらえるので馬鹿にはできないです。労働組合の共済金は結婚・出産・死亡などの冠婚葬祭のイベントが発生した際に何かしらもらえる場合があるので、問い合わせする癖をつけるのもよいかもしれません。

※他にもチェックすべき助成制度がありましたら、問い合わせフォームからご連絡いただけると随時更新したいと思います。よろしくお願いします。

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