指定難病の診断を受けた人のための指定難病医療費助成に関する説明です。前編でまずは指定難病と医療費に関して基礎的な内容を説明し、この後編で指定難病の医療費助成について説明をします。
お時間のある方はまずは、前編からどうぞ。
指定難病の医療費助成制度
制度概要
前半で説明した指定難病の診断を受けると、医療費助成の対象となり、医療費の自己負担額が軽減される場合があるよ。
診てくれた医者にその病気だねと言われたら医療費の助成を受けられるってこと?
原則は、「指定難病」と診断されるだけでなく、「重症度分類等」に照らして病状の程度が一定程度以上の場合が助成対象となるんだ。
ふむ。私は、特に今は身体で不自由しているところはないから、重症じゃないよね。。
じゃあ私は助成を受けられないのかな。
では一つ一つ説明していくね。
医療費助成の内容
上記は厚生労働省のHPにある、医療費助成制度の概要だよ。収入に応じて自己負担の限度額が定められているよ。
うーん。どういう助成が受けられるのかちょっとよくわからないわ。
自己負担限度額
じゃあ、具体例で説明するよ。以下は前半でも登場した1か月入院した場合の医療費の例だよ。
診療報酬点数 140,000点(1,400,000円)
→ 3割負担 420,000円
食事代 40,020円(29泊30日の場合、29*3*460=40020)
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自己負担額 460,020円
これが、実際は、高額療養費制度によって、適用区分「ウ」の場合は、以下の自己負担になる。(→詳細はこちら)
診療報酬点数 140,000点(1,400,000円)
→ 80,100円+(1,400,000円 - 267,000円)×1%
= 91,430円
食事代 40,020円(29泊30日の場合、29*3*460=40020)
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自己負担額 131,450円
(窓口で460,020円払った場合は328,570円支給される)
これが指定難病の医療費助成を受けられる場合、「一般所得Ⅱ」に該当する場合で「一般」で認定を受けている場合は、自己負担限度額は20000円になる。また、食事代についても指定難病の方は負担が1食460円→260円と少なくなる。
(「平成28年4月から 入院時の食費の負担額が変わります」(厚生労働省)参照)
診療報酬点数 140,000点(1,400,000円)
→ 20,000円
食事代 22,620円(29泊30日の場合、29*3*260=22620)
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自己負担額 42,620円
かなり自己負担額が軽減されているね。
一応、「一般所得Ⅱ」に該当する場合で「高額かつ長期」で認定を受けている場合は、自己負担限度額は10000円になるので同様に計算すると以下のようになるね。
診療報酬点数 140,000点(1,400,000円)
→ 10,000円
食事代 22,620円(29泊30日の場合、29*3*260=22620)
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自己負担額 32,620円
前半で説明した付加給付制度がある健保の場合は、その限度額と被保険者の所得によっては、大きく負担額が変わらない場合もあるかもしれないね。
自己負担の割合 3割→2割
医療費が高額になった場合の自己負担限度額が抑えられるだけではなく、比較的少額の場合も自己負担の軽減があるよ。たとえば前半で説明した以下の診療明細書の場合、医療費総額23470円のうち、いままでは3割の7040円が自己負担だったよね。
これが、3割ではなく2割負担になるよ。つまり、上記の場合は、23470円×2割=4690円の自己負担になる。
ふむふむ!
申請方法
申請の流れと準備する書類
では、いよいよ申請方法についてなんだけど、概要は「難病情報センター」の「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」に書いてあるよ。
最終的には、自分の住んでいる自治体の申請方法も確認しておこう。以下に各都道府県別に制度の案内のサイトと受付窓口について整理したよ。
基本的に上のリンクをよく確認すればばっちりね。わからなければ担当の保健所に問い合わせるのが一番てっとりばやいわね。
そうだね。全体の流れは上で確認してもらうとして、以下は知っておきたいポイントに絞って説明するね。
申請時期についての注意点
申請時期は重要なのでよく考えてほしいところだね。助成の対象は「申請が受理されてから」です。お医者さんに「入院しましょう」と言われたら、入院までに申請が受理されることが重要だよ。そうしないと申請が受理されるまでの入院は助成の対象ではなくなってしまうよ。
「申請が受理される」っていうのはどういうこと?指定難病を申請して認定が出るまでということ?
いや、申請書に不備がないことを保健所が確認して申請を受け付けるということだよ。直接保健所に申請書類を持っていく場合はその場でチェックしてもらえるので良いけど、郵送で申請書類を送る場合は注意が必要だね。
注意って?郵送だと郵送した日が申請日になるんじゃないの?
ポストに入れた日だったり、消印が押された日ではなく、郵便物が保健所について書類に不備がないことを確認した日だよ。なので、ポストに投函して翌日から入院するつもりの場合は郵便事情によっては間に合ってないことになるね。
それに、書類不備があると、返送されて再度修正版を送付することになるので、そうなってしまうとより間に合わなくなる。なので、可能であれば入院前に直接保健所に行きその日のうちに申請を受理してもらうのが確実だね。
直接保健所に行けなくて郵送にする場合は余裕を持った日程(できれば返送~再送になってもよい日程)で計画をしたほうが良いということだね。
そうだね。あともう一つ気を付けないといけないのはお医者さんにかいてもらう臨床個人調査票だね。書いてくださいと言って今日明日で書いてもらえる書類ではなく2週間ほどかかる場合もあるよ。何も言わないと2週間待たされる場合もあるので必要に応じてほしい時期をお願いをしたほうがいいよ。まずはすぐこれを依頼だね。
ふむふむ。じゃあ、難病の確定診断が出て、臨床個人調査票を書いてもらう期間が1週間はかかるとしても、入院は2週間後くらいに計画することになるのかな。
例えば多発性硬化症の場合は、急性期の症状を抑える治療はゆっくりできない場合もあるけれど、再発防止・進行抑制の治療について、急を要さないようであれば、申請してから治療を開始する計画を立てるのがよいね。お財布事情と体の事情を考慮して主治医とよく相談して決めてね。
それと、前にも言ったけれど、付加給付制度の限度額が指定難病助成とそれほど変わらない場合は、申請日をそこまで気にして入院日を決める必要がない場合もあるね。
認定要件についての注意点
わかったわ。申請を受理してから入院すれば無事にその入院も助成を受けられるってことだね!
それはちょっとちがうよ、申請内容が認定されれば、申請日以降の治療に対して助成を受けられるんだよ。申請が不認定になる場合もあるよ。
え?出せば認定されると思うってお医者さんが言ってたよ!
確かに、旧制度では診断さえつけば助成が受けられたんだけど、現行の制度では原則定められた重症度以上でないと認定されないんだ。
認定要件については、以下の厚生労働省のページから確認できるよ。
多発性硬化症の場合は、「EDSS4.5以上を基準とする」と書かれていて資料を見ると目安は「歩行:補助なし・休まず300m程度歩ける. 日常生活:最低限の補助が必要.」となるね。お医者さんがどのように評価したかは、もらった臨床個人調査票にきちんと書かれているよ。(以下は記載部分の抜粋)
この部分が4.5より小さい値であれば、不認定になる可能性はあるね。
そうかー。私はそれほど重症ではないから認定されないと思うわ。そうなると毎月の治療費が心配になってくるわ。
軽症高額該当
たわしさんは、確定診断を受けるまで病院に結構行った?
これまでに何回か腕や足がしびれることがあってそのたびにレントゲンやMRI、血液検査を受けたわ。そして今度は右足が動かしづらくなったので、大きな病院でまた検査を行って、症状を緩和する治療をしたんだよ。
じゃあ、軽症高額に該当するかもしれないね。
軽症高額該当ってなに?
この1年で指定難病に関する治療費が自己負担額10000円を超える月が3か月以上ある場合に、重症度が先ほどの基準を満たしていなくても指定難病の医療費助成を受けられるというものだよ。(軽症高額該当について(厚生労働省))
その条件なら、私は該当するわ。
では新規申請時からいきなり軽症高額該当での申請ができるので、証明できる領収書のコピーを用意して軽症高額該当で申請しよう。
わかったわ。
おわりに
この制度のおかげでだいぶ助かるね。でもやっぱり、治療のための費用は同じように高額なのに症状が軽いと認定を受けられなくなったというのは改善されないのかしら。
難しい問題だね。333疾病(2021年2月現在)が指定難病となっているけど、指定難病になっていない難治性の疾患はまだまだたくさんあるんだ。その一方でこの助成は公費で行っているので無限に助成をするわけにもいかない。より困っている人へ適切に助成ができるようにということだろうね。
じゃあ、この制度もさらに変わって助成を受けられた人が受けられなくなったりするかもしれないんだね・・。
ただ、今後ますます遺伝子関連をはじめとする医療技術の進歩で、今は難病になっているものが難病でなくなる時代も遠くはないと思うよ。その時が来るまでみんなで支えあっていこうね。