指定難病の診断を受けた人のための指定難病医療費助成に関する説明です。前編でまずは指定難病と医療費に関して基礎的な内容を説明し、後編で指定難病の医療費助成について説明をします。
基本的なことを理解している方は後編からどうぞ(後編は作成中)。
指定難病
指定難病の定義
たわしさん、今日も病院行ってきたようだけどどうだった?
すぽんじくん、いろいろ検査してきたけど、私の病気は多発性硬化症だって。再発防止のための治療をするために来月から入院することになったんだ。
それは大変だね。多発性硬化症の確定診断が出たということはまずは指定難病の医療費助成の申請をする必要があるね。
指定難病の医療費助成?お医者さんも言ってたけどいまいちよくわからなかったわ。それより、難病っていうのすごく怖いんだけど・・私の病気はそんなにやばい病気なの??
確かに、難病って言葉は、怖い響きだけどすべてがただちにそれほど深刻な症状をもたらすというわけではないよ。「難病」「指定難病」は、簡単に説明すると以下のようになるよ。
(正確な定義は厚生労働省「指定難病の要件について」を見てね)
難病 以下の条件を満たすもの
・なぜその病気になるか原因(仕組み)がはっきりわかっていない
・どうすれば完治するかわかっていない
・患者数が少ない珍しい病気
・長い間病気と付き合っていく必要がある指定難病 難病の条件に加えて以下の条件を満たすもので、厚生労働大臣が指定するもの
・日本での患者数がかなり少ない
・病気の診断基準が決まっている
ふむふむ、指定難病は、なぜ病気になるか、どうしたら治るかわからないけれど、病気だと診断するための基準は決まっているものなんだね。
そうそう。診断基準がはっきりしてないとその病気になったかどうかが医者のさじ加減になってしまうからね。診断できる医者も都道府県が指定した難病指定医だけとなっているよ。
指定難病の種類
指定難病にはどういうものがあるの?
指定難病は2021年2月12日現在で333疾病が認定されているね。以下のリンクから一覧を見ることができるよ。
たわしさんの多発性硬化症は、告示番号13の「多発性硬化症/視神経脊髄炎」に該当するね。
さっき、333疾患といっていたけど、1つに2つの病気が含まれていることもあるのね。
視神経脊髄炎はもともと多発性硬化症の一種と考えられていたのだけど、性質が異なることが分かってきて別の病気と考えられるようになったんだ。多発性硬化症についての説明は別の機会でできたらするね。
医療費の仕組み
医療費の自己負担額
自分の病気が指定難病に該当することはわかったわ。はじめにすぽんじくんが言っていた医療費助成っていうのは、申請すると医療費がタダになるの?
ほとんどの人はタダにはならないよ。でも、支払う医療費が軽減されるよ。医療費助成の話をする前に、医療費自体の話をしておこうと思うんだけど、たわしさんは医療費の全額を窓口で払っているわけではないことは知っているかな。
うん。たしか3割負担だよね。
そうだね。日本の医療保険制度の仕組み(日本医師会)のサイトによると、正確には以下のような負担割合となっているよ。
小学校入学まで:2割負担
https://www.med.or.jp/people/info/kaifo/system/
小学校入学から69歳まで:3割負担
70歳~74歳:2割負担(現役並みの所得がある人は3割負担)
75歳以上:1割負担(現役並みの所得がある人は3割負担)
ただ、この割合はあくまでベースであって、ここにいろいろな制度が適用されて医療費が決まっていくよ。例えば子どもの医療費などは、各自治体に子ども医療費助成制度というのがあるね。
あ、そうだね。私の住んでいるところは小学校卒業まで外来も入院も一律窓口で支払うのは200円だ。
他にも生活保護受給者は医療費は無料だったり、重度障碍者、特定疾病の人も同じような制度があるよ。
ちなみに、すぽんじが言った「特定疾病」だが、
特定疾患:指定難病の前の制度での言い方(定義は異なる)
特定疾病:罹患率や有病率が加齢と関係する16の病気で、3~6か月以上継続して要介護、要支援状態となる割合が高い病気(特定疾病の選定基準の考え方(厚生労働省)参考)
で異なる概念なので、前の制度から知っている人は混乱するかもしれないので注意な!
そうそう、2014年までは指定難病に対応する言葉は特定疾患だったので、特定疾患のほうが耳慣れている人もいるかもね。ただ、いろいろな部分が異なっているから最新の情報を確認しよう。・・・っておじさんはだれ??
医療費の仕組み
閑話休題。医療費を支払うと・・・
ちなみに閑話休題。っていうのは、「余談を打ち切って、本筋にもどる意を表す語」で、要するに「それはさておき」「さて」とおんなじ意味だYO!
はい。わかりづらい言葉を使用してすみませんでした!それでは今から医療費についてもう少し細かく説明させてください。
どうやらこの人は補足が必要そうなときに急に出てくる補足おじさんのようだね・・。
医療費を支払うと、診療明細書と領収書をもらうと思います。まずは診療明細書の一例から。
このように、医療行為はすべて点数化(診療報酬点数)されていて、その積み重ねで医療費が計算されるよ。すべて足すと2347点になり、1点は10円相当なので、診療明細書を見るだけで医療費の総額は23470円とわかるよ。
それで、先ほど話をしたように、その総医療費すべてを窓口で支払っているわけではなく、この例だと3割を窓口で支払うことになるので、2347(点数)*10(1点10円)*0.3(3割)=7041で10円未満切り捨てで7040円とあっているんだ。
残りの7割はだれが払うの?
残りの7割は加入している健康保険から支払われるよ。財源は毎月収めている健康保険料だね。あと、医療費で大事なポイントは全額に対して3割負担ではないということだね。
例えば入院した場合の食費や個室を希望した場合の差額ベッド代は3割ではなく全額負担になるよ。
自己負担限度額と付加給付
自己負担限度額
前置きが長くなっているけどもう少しだけ医療費について説明するよ。1か月まるまる入院すると3割負担でもかなりの金額になるんだ。例えばこんな感じ。
診療報酬点数 140,000点(1,400,000円)
→ 3割負担 420,000円
食事代 40,020円(29泊30日の場合、29*3*460=40020)
-----------------------
自己負担額 460,020円
えー。こんなにお金もってないよ!
でも大丈夫!高額療養費制度というのがあり、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、ひと月(月の初めから終わりまで)で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給してくれる制度があるよ。(食費や差額ベッド代は除く)
さっきの費用を上記の適用区分「ウ」で計算すると、以下のようになるよ。
診療報酬点数 140,000点(1,400,000円)
→ 80,100円+(1,400,000円 - 267,000円)×1%
= 91,430円
食事代 40,020円(29泊30日の場合、29*3*460=40020)
------------------------
自己負担額 131,450円
(窓口で460,020円払った場合は328,570円支給される)
あ、だいぶ安くなった・・。まだ高いけど・・。
ちなみに加入している健康保険組合から限度額適用認定証を発行してもらえば、窓口で支払う時点から限度額を考慮してもらえるので初めに支払う金額も軽減できるよ。詳しくは自分が加入している健康保険組合に問い合わせしてね。
付加給付
あと、意外に知られていないのが付加給付制度だね。付加給付とは、加入している健康保険が独自で行っている給付のことで、先ほどの限度額には達していなくても、健康保険が定める限度額に達していれば、それを超えた金額が給付されるという制度だよ。
付加給付制度は加入している健康保険によって違うというわけね。
そうだね。例えばある大手メーカーの健康保険組合だと定める限度額は25,000円で、この場合自己負担額は以下のようになるよ。こちらは、事前に考慮はされないから、窓口で一旦支払ったうえであとでお金が返ってくるよ。
診療報酬点数 140,000点(1,400,000円)
→ 25,000円
食事代 40,020円(29泊30日の場合、29*3*460=40020)
-----------------------
自己負担額 65,020円
(限度額適用認定証を持っていれば窓口で払うのはこの前に計算した131,450円。そのあとで差額の66,430円支給される)
ふむふむ。何気なく病院に行って何気なくお会計していたけど、いろいろな仕組みがあるのね。
後編に続く
以下リンクより後編もどうぞ。
動画版
同じような内容を動画にしたものも以下にありますのでよかったらどうぞ。